オペラ歌手の日常|“声”という力。もし「ちょっと歌ってほしい」と言われたら
明日明後日とプチバカンスで友達とオーストリア国境の山へ、そして週末には友達の結婚式で海へ…と行事盛り沢山でちょっと頭浮かれすぎなはなです。笑
そして今週はアフリカからの空気で暑くなると聞いて、若干溶けかかっている私。と言っても日本の夏に比べればまだまだパラダイスだと思ってます。
コンサートとは違う、普通の日常生活の中で「ちょっと歌ってみて」と言われた場合どうするか、個人的な思いを書きたいと思います。
明日、明後日、そして週末の旅で綺麗な写真がたくさんアップできると思うので(笑)今日は真面目な話題。
イタリアに住んでいると、ホームパーティに招かれる機会が日本以上に多い。
ホームパーティと言うとなんだかオシャレな雰囲気になっちゃうけど、内容は至って様々。お好み焼き…なべ…餃子みたいな日本のご飯だったり、イタリアンだったり、ピザだったり…。本当に色々。そしてオシャレな時もあるけど、そうじゃない時がほとんど。笑
そんな中で、はじめまして、の人とご飯を食べる機会もよくある。
そんな時、日本人・イタリア人問わず「オペラ歌手です」と紹介されると高確率…とまではいかないまでも、ちょくちょく「ちょっと歌ってみてほしい」とお願いされる。
イタリアの文化を専門にしている外国人に興味をそそられるのかもしれない。
イタリア来たての頃はそう言われても「完璧でなければいけない」という自分の勝手な完璧主義によって、「発声もなしに変な歌を聴かせられない!そんなの人様に聞かせてはダメだ!」といつも断っていた。仕事として専門的にやっているんだから、無料でなんか歌えない!というわけではなく、自分のベストじゃなきゃ聞いてもらう意味がないと思っていた。
イタリアに来て2年後くらいかな…。出会った日本人ソプラノの方に「そんなことは勝手な自己満の世界だよ!生で聞いてもらってそこから何か始まるかもしれないし、人のつながりができるかもしれない!それにその場にいる人は絶対に喜んでくれる。完璧じゃなくてもいいんだよ。」と言われた。
そうか!完璧ばかりが大切なことなわけではないんだ!
その日から私は自分のコンディションさえ悪くなければ無発声でも歌うことにした。(声帯に負担がかかるから、アルコールが入っている時、本番前はお断りさせてもらっている)
確かに100%喜んでくれる。
もちろん劇場やコンサートスペースで聴くこと、そして歌うことも大切。演奏側も聴く側もきちんと準備ができているから。
でも、もしそれが例えかしこまったコンサートじゃなくても、自分の歌で喜んでもらえるなら場所はどこだっていい、と思うようになった。
もちろん、プロなんだから、お金をもらって演奏すべきと思っている人もいるし、私もそうあるべきだと思っている。
でも、時にそれでその場にいる人が喜んでくれるなら、楽しんでくれるなら、少しだけなら…歌うようにしている。
何年も経っても思いが変わらないのは、やっぱり、声を聞いて感動してくれるからだと思う。そして私も間近でその反応を感じることができるから。
そもそも、オペラに限らず歌というのは多くの人が人生の中で触れるので、イタリア・日本問わず、専門的にやってきたわけではなくても、一応歌おうと思いさえすれば“声”が出る。
その“誰でもできる”ことであるからこそ、それを極めた人の演奏は心を動かせるんだと思う。
最近たまたまそういう機会が立て続けに3回続いた。
3回中3回、涙を流して感動してくれる人がいた。
もちろん全員が全員ではない。
それでも無発声、無伴奏(もちろんその場にピアノがあるわけでも、ピアニストなんているわけがないので)の歌にでも心を動かして感動してくれる人がいる。
それに私も心を動かされる。
さっきも書いた通り、コンサートやオペラ公演で演奏すること、演奏を聞いてもらうことももちろん大切。
でも、そればっかりが音楽じゃないと私は思っている。
特に声楽という分野は、楽器がなければ実演できない楽器奏者と違って身一つさえあれば演奏できる。(だからこそ体調管理が大変なこともある。)
どんな機会でも、どんな場所でも、その時にできるコンディションであれば、歌う。今までもそうしてきたし、これからもそうしていくと思う。
画家は思ったその場で絵は書けないし、彫刻家には彫る道具と材料が必要。ピアニストはピアノがないと演奏はできない。
歌う、それは“声”を使う芸術だからこそできる特権!
そして誰もが経験してきた、多くの人ができることであるからこそ、そして誰もが普通に持っている“声”を使った芸術だからこそ心が動くのかな。と思ったり。
なんかあんまり面白く書けなかってごめんなさい。
でも、この「ちょっと歌ってみて」に答える私の気持ち、書いてみたかったのでお付き合いいただきました。
もし私を見かけて、ちょっと歌ってほしい、と思った時はぜひリクエストしてみてくださいね。できる限りお答えしますので!笑
写真家の蜷川実花さんが「鍛え上げられた人間の芸は面白い」と言っていた、と何かで読んだ。
普通の人が普通にもできることを「極める」からこそ見ている方も面白いし、芸をする側は感動を与えることができる。
日々鍛錬。
いろんなことを経験しながら、芸を極めていきたいと思います。
◇◆おまけ◆◇
金曜日にあったホームパーティの主役は餃子さん♪笑
日本人女子にレクチャーされながらイタリア人女子も悪戦苦闘しながら餃子を包み、最後には慣れた手つきでこんなカンペキな餃子ができましたとさ♪
イタリアの日暮れ後の空、大好き。↓
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