イタリア語にも敬語⁉私流の訳・字幕|【YouTube】歌劇「椿姫」より二重唱 ある日、幸せにも|対訳
今日は前回「椿姫」二重唱のYouTube解説記事で載せきれなかった対訳と共に私なりの訳す時のこだわりをちらっとご紹介。
ちらっとじゃないと長くなっちゃうからね!笑
和訳とかイタリア語とかに興味のない方は今回の記事は飛ばしてくださいっ♡笑
それでは…。
みなさんご存知の通り、日本語には敬語がありますね。大切なお客様や目上の方に「なんか飲む?」とは誰も言いませんね。笑 「何か飲まれますか?」と聞きますよね。一方英語は社長に話そうが、友達に話そうが、家族に話そうがみんなYouだそう。社長にも友達にも「なんか飲む?」で良いそう。フランクですね。笑
一方、イタリア語には敬語があるんです。
丁寧に話しているのか、近しい距離感で話しているのかで動詞の活用が変わってくるんです。
…ん。
ちょっと話が難しい?笑
動詞の形が「飲む」と「飲まれます」で違うように、イタリア語でも活用の違いで登場人物同士の距離感を感じることができます。
この二重唱はヴィオレッタとアルフレードの出会いの場。
二人ともVoi(ヴォーイ)という敬語の形を使って話しています。初めて話す二人、それも礼儀作法が大切とされる上流社会ですから当然ですね。
そして2幕で二人が恋人同士として再び登場する際にはTu(トゥ)という親しい間柄に使う活用になっているんです。なんだかこんなちょっとしたところにも二人の距離感の変化を感じられるなんて面白いですよね。
私が和訳をする時に気を付けているのはこの敬語なのか敬語じゃないのか…という問題もそうですが、それぞれの登場人物にあった言葉使いをさせること。
たとえば和訳二段目。Voi qui!というたった2語の訳ですが、直訳するとVoiはあなたquiはここ。
ヴィオレッタは高級娼婦です。
上流階級に出入りのない、ただの娼婦であればアルフレードを見つけた時に恐らく「え!ここにいたの!」となりますが、アルフレードに対し敬語で話していること、そしてヴィオレッタの持つエレガントな人物像を表現するため「ここにいらしたの!」としました。
もちろん言葉のチョイスには私の主観が入っています。
でも登場人物のイメージをより分かりやすく伝えるために、それも必要なことなのかな、と思っています。
日本語は同じ意味でもたくさんの表現のし方がある、大変美しい言語だと思います。その中で自分がどの言葉を選び、どんな文体を使ってキャラクターやその時の感情の細かなニュアンスを表現していくのか、その音楽にはどの言葉が適切か…など気を配りながら楽しく訳を作っています。
「できる限り意訳はせず、直訳でも分かりやすく、硬くなり過ぎない」
をモットーにこれからも続けていこうと思います♪
和訳についてのちょっとしたこだわり・裏話でした♡
“La Traviata” Un dì, felice, eterea G.Verdi
ヴェルディ作曲 歌劇「椿姫」より ある日、幸せにも
| ヴィオレッタ | Oh qual pallor! | おぉ なんという青白さ! |
| Voi qui! | ここにいらしたの! | |
| アルフレード | Cessata è l’ansia che vi turbò?… | 落ち着きましたか?… |
| ヴィオレッタ | Sto meglio. | 先程より良くなりました。 |
| アルフレード | Ah, in cotal guisa v’ucciderete… | あぁ このような生活では身を滅ぼしてしまいますよ… |
| aver v’è d’uopo cura dell’esser vostro… | 体を労わらなくては… | |
| ヴィオレッタ | E lo potrei? | 私にそれができるかしら? |
| アルフレード | Se mia foste, | もしあなたが私のものなら |
| custode io veglierei pe’ vostri soavi dì. | あなたの穏やかな日々をお守りするのに。 | |
| ヴィオレッタ | Che dite? | なんですって? |
| Ha forse alcuno cura di me? | 誰も私のことを気遣ってくださらないとでも? | |
| アルフレード | Perché nessuno al mondo v’ama… | この世で誰一人あなたのことを愛していないので… |
| ヴィオレッタ | Nessun?… | 誰一人?… |
| アルフレード | Tranne sol io. | この私を除いては。 |
| ヴィオレッタ | Gli è vero!… | 本当ね!… |
| Sì grande amor dimenticato avea. | 偉大な愛を忘れておりましたわ。 | |
| アルフレード | Ridete!… e in voi v’ha un core?… | 笑うのですか!あなたは心をお持ちでない?… |
| ヴィオレッタ | Un cor?… Sì… forse… e a che lo richiedete? | 心?…多分持っていますが…それが何? |
| アルフレード | Ah, se ciò fosse non potreste allora celiar… | もし心をお持ちなら、バカになどできないはずです… |
| ヴィオレッタ | Dite davvero? | 本気でおっしゃっているの? |
| アルフレード | Io non v’inganno. | 嘘は申しません。 |
| ヴィオレッタ | Da molto è che mi amate?… | だいぶ前から私の事を愛していると? |
| アルフレード | Ah sì, da un anno. | はい、一年前から。 |
| Un dì felice, eterea, | ある日、幸せにも | |
| mi balenaste innante, | あなたが私の前に光の如く現れました。 | |
| e da quel dì tremante | その日から | |
| vissi d’ignoto amor. | まだ知らぬ愛のため生きてきました。 | |
| Di quell’amor ch’è palpito | 全宇宙の鼓動である | |
| dell’universo intero, | その愛のために。 | |
| misterioso, altero, | ミステリアスであり、崇高で | |
| croce e delizia al cor. | 心にとって苦しみでもあり、喜びでもある愛のために。 | |
| ヴィオレッタ | Ah, se ciò è ver, fuggitemi… | もしそれが本当なら、私には無理よ… |
| solo amistade io v’offro; | 私が差し上げられるのは友情のみ | |
| amar non so, né soffro | 私は愛することを知らないし、 | |
| un così eroico amore. | このような偉大な愛は耐えられませんの。 | |
| Io sono franca, ingenua; | 私は無邪気で気まぐれですの。 | |
| altra cercar dovete; | 他の女性をお探しになったほうがいいわ。 | |
| non arduo troverete | 私のことを忘れるなんて | |
| dimenticarmi allor. | 難しいことではないはずよ。 | |
| Amor dunque non più… vi garba il patto? | 愛についてはもう終わり…お約束ですよ? | |
| アルフレード | Io v’obbedisco… Parto… | あなたに従います…帰ります… |
| ヴィオレッタ | A tal giungeste? | そうまでなさるの? |
| Prendete questo fiore. | この花をお受取りになって。 | |
| アルフレード | Perché? | なぜですか? |
| ヴィオレッタ | Per riportarlo. | またここへ持ち帰ってくるために… |
| アルフレード | Quando? | いつ? |
| ヴィオレッタ | Quando sarà appassito. | このお花がしおれたら。 |
| アルフレード | Oh ciel! Domani… | なんと!明日… |
| ヴィオレッタ | Ebbene…domani. | そうね…明日。 |
| アルフレード | Io son felice! | 私は幸せだ! |
| ヴィオレッタ | D’amarmi dite ancora? | まだ私を愛しているとおっしゃるの? |
| アルフレード | Oh, quanto v’amo! | おぉ どれほど愛していることか! |
| ヴィオレッタ | Partite? | お帰りで? |
| アルフレード | Parto. | 失礼します。 |
| ヴィオレッタ | Addio. | さようなら。 |
| アルフレード | Di più non bramo. | もうこれ以上何も望みません。 |
| ヴィオレッタとアルフレード | Addio. | さようなら。 |









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